アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは、花粉、ダニ、ハウスダスト、ペットの毛などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に対して免疫反応が過剰に起こり、鼻の症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)を引き起こす疾患です。季節性(花粉症など)と通年性(ハウスダストやダニなど)があります。
症状
- くしゃみの連続発作
- 水のようにサラサラした鼻水
- 鼻づまり(特に夜間や朝方に強いことがある)
- 目のかゆみ、涙目(結膜炎を伴う場合もある)
原因
アレルギー性鼻炎の原因は、主にIgE抗体を介したアレルギー反応です。代表的なアレルゲンには以下があります:
- 花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネ科植物など)
- ハウスダスト(ダニ、カビなど)
- 動物の毛やふけ
診断
診断は以下を組み合わせて行います:
- 症状の問診(季節性か通年性か、季節性ならいつか)
- 鼻鏡検査による鼻の状態確認
- 鼻汁中の好酸球検査
- 血液検査(IgE抗体測定)
治療
環境整備
- ハウスダスト対策(掃除、布団のダニ対策)
- ペットとの接触を制限
- 花粉飛散時の外出を控える、マスクやメガネの着用
薬物療法
- 抗ヒスタミン薬(くしゃみ、鼻水の改善)
- ステロイド点鼻薬
- ロイコトリエン受容体拮抗薬
- 点眼薬(目のかゆみがある場合)
免疫療法(減感作療法)
アレルゲンを少量ずつ体内に取り入れて体を慣らすことで、症状を根本的に軽減する治療法です。現在は、スギとダニに対する免疫療法が可能です。3年以上の継続が必要です。
手 術
重症例には手術を行います。鼻腔形態が悪い(鼻腔が狭い、腫れが高度)方には有効です。鼻腔を左右に分ける壁(鼻中隔)の彎曲を修正する鼻中隔矯正術、腫れた鼻腔のヒダを小さくする粘膜下下鼻甲介骨切除術、これに加えて、鼻汁の分泌を減らすために後鼻神経切断術などがあります。
鷹の子病院耳鼻咽喉科ではこれらすべての治療法に対応しています。患者さんのニーズに合わせた治療を提供します。
慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎とは、副鼻腔(鼻の周囲にある空洞)が長期間にわたり炎症を起こす病気です。
原因
慢性副鼻腔炎の原因は次のようなものがあります。
- 細菌感染:急性副鼻腔炎が慢性化したり繰り返したりして慢性化する。
- 真菌(カビの一種)感染
- 歯の炎症
- 好酸球による炎症(好酸球性副鼻腔炎)
症状
- 鼻づまりや鼻水(特に黄色や緑色の濃い鼻水)、後鼻漏(鼻汁がのどに流れる)
- においがわかりにくい(嗅覚障害)
- 頭重感、痛み(特に前頭部や頬部)
診断
- 問診・症状の確認
- 鼻鏡検査、内視鏡検査:鼻の中の炎症やポリープの有無を確認
- レントゲンやCT検査:副鼻腔の構造や炎症の程度を評価、副鼻腔腫瘍の除外
- 必要に応じてアレルギー検査や細菌培養検査を行うこともあります
治療
保存的治療
- 抗菌薬や粘液調整剤の投与:増悪時には抗菌薬を投与します。
- マクロライド少量療法:マクロライド系抗菌薬を少量2,3か月間投与して、鼻汁の分泌抑制 や炎症の軽減など粘膜の働きの改善を図ります。
- 好酸球性副鼻腔炎では難治例があり、炎症を起こすタンパク(サイトカイン)をブロックする注射剤を使うことがあります。
外科的治療
- 内視鏡下副鼻腔手術(ESS):薬物療法で改善しない場合に、ポリープなどを除去し、副鼻腔の入り口を開大し、副鼻腔の通気を改善する手術です。内視鏡下に行いますので鼻外を切開することはありません。
好酸球性副鼻腔炎
好酸球性副鼻腔炎は、慢性副鼻腔炎の一種で、鼻や副鼻腔に 好酸球という白血球の一種が多く集まることで炎症が起こる病気です。好酸球はアレルギー反応や免疫反応に関与しています。好酸球性副鼻腔炎では炎症が強く、ポリープ(鼻茸)を伴うことが多いのが特徴です。
特徴
- 嗅覚障害を伴うことが多い。
- 通常の副鼻腔炎の治療では効果が乏しく、副腎皮質ステロイド薬の内服が有効です。
- 再発しやすい:薬物治療後も症状が戻ることが多い
- 喘息を合併することが多く、解熱鎮痛剤やかぜ薬で喘息発作が誘発されることがあります。
- 好酸球性中耳炎を合併することもあります。
治療
内科的治療
- ステロイド点鼻薬:好酸球による炎症を抑える
- 抗ロイコトリエン薬
- 副腎皮質ステロイド薬:増悪時に内服します
- 鼻洗浄:炎症物質や鼻汁の排除
- 術後の再発例では、炎症を起こすタンパク(サイトカイン)をブロックする注射剤(生物学的製剤)を使うことがあります。
外科的治療
- 内視鏡下副鼻腔手術(ESS):鼻ポリープや閉塞部位を取り除き、鼻腔や副鼻腔の通りを改善
- 手術後も再発予防のために薬物療法が継続されることが多い
好酸球性副鼻腔炎は再発しやすく、長期的な治療が重要です。薬物療法と手術を組み合わせることで、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。当院では内服治療、手術から再発例に対する生物学的製剤の投与まで、幅広く治療を行っています。難治性の喘息を合併することもあり、呼吸器内科と連携を取り、治療にあたっています。
嗅覚障害
嗅覚障害とは、においを感じる能力が低下したり、全く感じられなくなった状態を指します。日常生活に大きな影響を与えることがあり、食事の楽しみや安全面(ガス漏れや腐敗臭の感知など)にも関わります。
原因
嗅覚障害の原因は多岐にわたります。主なものは以下の通りです。
① 鼻腔や副鼻腔の疾患
② 神経や脳の異常
- ウイルス感染後嗅覚障害(風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染後など)
- 頭部外傷による嗅神経損傷
- 神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病など)
③ 薬剤や化学物質の影響
診断
- 問診・症状の確認
- 鼻内視鏡検査
- 嗅覚検査
- 副鼻腔CT検査、頭部MRI検査
- 必要に応じて神経学的評価や血液検査
治療
嗅覚障害の治療は原因によって異なります。
① 原因疾患の治療
② 神経障害に対する治療
- 嗅覚刺激療法:日常的に特定の香りを嗅ぐことで、嗅神経の回復を促す
- 薬物療法:一部の場合に副腎皮質ステロイド薬や漢方薬などを使用
嗅覚障害は原因や発症後の期間によって回復の見込みが異なりますが、早期診断・治療により改善の可能性があります。