耳硬化症
耳硬化症とは、中耳のアブミ骨という音を伝える骨が硬化することで、耳の音の伝わりが悪くなり、難聴を引き起こす病気です。通常、鼓膜から入った音は耳小骨を通じて内耳へと伝わりますが、耳硬化症ではアブミ骨が固まって動きにくくなるため、音の伝導が妨げられます。
症状
- 徐々に進行する難聴
- 耳鳴り
発症の特徴
- 若い成人から中年期にかけて発症することが多い
- 両耳に起こることが多いが、片耳の場合もあります。
- 男女ともに見られるが、特に女性に多い
治療
- 手術(アブミ骨手術)
硬化したアブミ骨を一部取り除き、人工アブミ骨で音の伝導を回復させます。内視鏡下耳科手術の良い適応です。 - 補聴器装用
手術が難しい場合や希望しない場合
耳硬化症は、放置すると難聴が進行しますが、適切な治療によって改善が期待できる疾患です。
先天性中耳奇形
生まれつき中耳の構造に異常があり、音の伝わりに支障をきたす病気です。中耳には鼓膜や耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)があり、これらの働きによって外耳から内耳へと音が伝わります。耳小骨奇形があるとこの伝音機構に障害が生じ、先天性難聴となります。
特徴
- 難聴:軽度から重度までさまざま。片耳のみの場合もあれば両耳にみられることもあります。
- 外耳の形態異常を伴うこともあります(外耳道閉鎖、耳介の変形など)。
- 鼓膜や耳小骨の形成不全、固着、欠損などが代表的な病態です。
診断
- 新生児聴覚スクリーニングで難聴が疑われ、耳鼻咽喉科で詳しい検査を行う。
- 一側性の場合、健診で発見されることもあります。
- 幼児聴力検査やアブミ骨筋反射を行い、CTなどの画像検査で中耳の構造を確認します。
治療
- 手術(鼓室形成術、アブミ骨手術)による治療が可能な難聴で、内視鏡下耳科手術の良い適応です。
- 補聴器装用も有効です。
特に両側性の場合、言語発達に影響するため、早期発見・早期介入が大切です。
突発性難聴
突発性難聴は、ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる原因不明の内耳性難聴。多くは片耳に起こり、めまいや耳鳴りを伴うこともあります。
症状
- 片耳の聞こえが急に悪くなる
- 耳鳴
- 耳がつまった感じ(耳閉感)
- めまいを伴うこともある
- 基本的に再発しません
治療
- 発症から早期(できれば1週間以内)の治療が重要。
- 副腎皮質ステロイド薬を使います。重症例では入院して点滴で投与します。
- 内耳の血流を改善する薬を使うこともあります。
経過について
- 重症例や治療開始が遅れた場合、聴力が回復しないことが多くなります。
- 当院では最初の治療で回復が思わしくない場合、2次治療として中耳に副腎皮質ステロイド薬を注入する治療法(鼓室内ステロイド注入療法)も行っています。
低音障害型感音難聴
低音障害型感音難聴は、低い音が聞こえにくくなる病気です。比較的若い女性に多く、突発的に発症することがあります。
症状
- 耳がつまった感じ(耳閉感)
- 耳鳴り(低い「ブーン」や「ゴー」という音が多い)
- 低い声や低音が聞き取りにくい
- めまいはあまり伴わない
原因
内耳(音を感じる部分)のリンパ液が増えすぎる(内リンパ水腫)ことで発症すると言われています。ストレスや疲労、睡眠不足などが引き金になると考えられています。
治療
- 早期の治療が重要(できれば発症から1週間以内)
- 副腎皮質ステロイド薬や内耳のリンパ液を減らす目的で利尿薬などを内服
- 多くは数週間で改善しますが、再発することもあります
- 症状が長引き、メニエール病に移行する場合もあります
加齢性難聴(老人性難聴)
加齢性難聴は、年齢とともに少しずつ耳の聞こえが悪くなる病気です。50歳代からはじまり、高い音から聞き取りにくくなり、徐々に進行します。音は聞こえるが会話の内容がわかりにくくなり、会話の中でも聞き間違いや聞き返しが増えるのが特徴です。
症状
- 左右同程度の難聴で、耳鳴りを伴うこともある
- 高い音(チャイムの音、電子音、女性や子どもの声など)が聞こえにくい
- 話し声は聞こえるのに、言葉がはっきり理解できない
- 複数人での会話や雑音のある場所で聞き取りにくい
治療・対処法
- 聞こえにくさを補うために補聴器の使用が有効です
- 補聴器を早めに使い始めると、会話能力の低下を防ぎやすい
- 難聴が進行している場合は、人工内耳が検討されることもあります
- 当院では補聴器装用から人工内耳の適応まで対応します。
難聴は徐々に進行するため、症状に乏しく、放置されがちです。長年放置すると、次のようなことも起こることがあります。
- 会話のストレスから人との交流を避けるようになる
- 孤独感やうつ状態につながることがある
- 長年放置すると、認知症のリスクを高めることがわかってきました。
小児難聴
小児難聴は、子どもが生まれつき、または成長の途中で耳の聞こえに問題をもつ状態で、様々な原因があります。難聴の程度もさまざまで、成長とともに進行する場合とそうでない場合があります。小児期からの難聴は、言葉の発達や学習、社会生活に大きく関わるため、早期に気づいて対応することがとても大切です。
主な原因
- 先天性(生まれつき)
・遺伝によるもの
・中耳、内耳の奇形
・妊娠中の感染症(風しん、サイトメガロウイルスなど)
・出産時の問題(低体重、仮死など)
- 後天性(成長してから起こる)
・遺伝によるもの
・中耳炎など耳の病気
・強い音(騒音)の影響
・薬の副作用
・外傷
気づきやすいサイン
- 発語や言葉の発達がおそい
- 音への反応が乏しい
- 名前を呼んでも反応が遅い、または気づかない
- テレビの音を大きくする
- 会話で聞き返しが多い
- 集中力が続かない、学校での学習に遅れが出る
検査と診断
- 赤ちゃん(新生児)は新生児聴覚スクリーニング検査で早期発見が可能なので、必ず検査を受けましょう。
- 成長後も健診を受けましょう。
- 幼少児の聴力検査は難しい場合もあり、年齢に応じた幼児聴覚検査を行います
- 先天性難聴の遺伝子検査も保険診療で行うことができます。難聴の進行の可能性や他の症状が出ないかなどを予測できる可能性があります。
治療・支援
- 補聴器を使って聞こえを補う
- 難聴が重い場合は人工内耳埋込み術を検討する
- 言語聴覚士による言葉の訓練やリハビリ
- 学校や家庭でのサポート体制を整える
小児難聴は、「早期発見・早期介入」がとても重要です。できるだけ早く補聴器や人工内耳を使い始めることで、言葉の発達や学習に良い影響があります。鷹の子病院では愛媛人工内耳リハビリテーションセンター(でんでん虫教室)で小児難聴専門の言語聴覚士が幼児聴力検査や訓練を行っています。
